Dr. Ian Dunbar’s ハワイ ワークショップ

Red Heart-SIRIUS 5日間実践ドッグトレーニング

日程 2002/2/6~2/14 会場 カウアイ動物愛護協会 ハワイ カウアイ島
講師 イアン・ダンバー博士 (Dr.Ian Dunbar)
ケリー・ゴーマン (Kelly Goman)
ウェンディ・マー (Wendy Mar)

シリウス・パピートレーニングとペットドッグトレーニングセミナー事務局の共催

※ペットドッグトレーニングセミナー事務局は、レッドハート株式会社内にあります。
ダンバー博士は、「ドッグトレーニングは、オフ・リーシュ(=オフ・リード、引き綱なし)で行うべきだ」と主張しています。リーシュ(リード、引き綱)がついていないと言うことをきかせることができなければ、飼い主にとって犬にとっても、ハッピーなことではないからです。

 

カウアイ・ワークショップのテーマ

今回のセミナーは、野犬や捨てられた犬などを保護している、ヒューメイン・ソサイアティで実施されました。家庭で飼われている犬たちをハンドルするのと違い、なかなか思うように進まないこともありましたが、とても良い経験になりました。メインテーマは「子犬からきちんとしつけることの重要性」です。子犬のうちにしっかりとしつけをすすれば、成犬の問題行動は出さずに済むのです。
以下のセミナー報告は、ナカニシが感じたこと、学んだことを書き留めたメモをかいつまんでまとめたものです。

家庭犬のトレーニングの概略

犬のトレーニングは、犬の成長、発達に合わせて行われなければなりません。競技会などに出場する犬たちと違い、ペットとしての犬たちは、ベッドに乗ろうが、ソファに乗ろうが、飼い主が好きな時に、気ままに抱っこできることが大事です。自分で思うとおりに扱うことができない犬を飼っていることは、すっかり仲が冷めてしまった夫婦の生活のように、冷たく、辛く、寂しいもの・・・?子犬の頃にはなんでも許して、大きくなってから叱り始めるなどというルール違反は、飼い主として絶対にしてはならないことです。

保護された2ヶ月の子犬登場

犬のしつけをするときに、その犬の気質を正しく理解することはとても大事です。犬の反応から現実的な、あるいは将来出てくるであろう危険性を見分ける必要があります。怖がりな子犬を触るのと、そうでない子を触るのとでは、接する態度は全然変わらなくてはなりません。

登場した2ヶ月の子犬はとてもシャイで、人の手で触られることを怖がっています。この月齢でこの反応は異常なことです。もっと早い時期から、人間と触れ合う(社会化)必要がありました。ブリーダー元でこのような子犬と出合ったら要注意です。うまく慣らしていかれなければ、怖くて人と噛むような犬になるかもしれません。緊急を要する状態ということで、ただちにしつけを始める必要があります。
実際この子犬は、ワークショップが1日1日と進むにつれ、とても変わりました。たくさんの人に正しいハンドリングをされることで人に慣れ、どんどん良くなっていったのです。
子犬は、男性や子供に触られるのがあまり好きではありません。好きでないけれど、触られないわけにはいきませんので、子犬が楽しく気持ちが良いように慣らしてあげる必要があるのです。

まず、人の手からフードを受け取ってくれること!?ハンドフィーデイング(手からフードを与える)ことの重要性

子犬をトレーニングするときに大事なのは、まず人間の手からフードをもらうことが楽しいことだと教えることです。毎日のごはんを、トレーニングをしながらすべて手から与えても良いでしょう。フードを持っている手を好きになったら、子犬はその手についてくるようになります。そうなったら、あなたの手をルアーのように動かすことによって、子犬を誘導することができるようになります。

触られることに慣らす

子犬が手元にきたら、人から触られることに慣れさせる必要があります。おやつを手から食べてくれるようになったら、まず子犬を抱いて安心させ、最初はそれほど嫌がらないところを触り、おやつを与えます。首や胸、お腹などはわりと好きなところですが、頭、耳、足先、お尻、尾などは嫌がる子が多いので、おやつを与えながらゆっくりと触っていきます。

首輪を触られることに慣らす

からだを触られるのが大丈夫になったら、次は首輪をつけ、首輪を触られることに慣らしていきます。だんだんに首輪を少々荒っぽくつかむようにしていきます。首輪をつかむたびにおやつを与えていると、子犬は首輪をつかまれることが好きになります。

4ヶ月の子犬登場

フィールドでのトレーニング。
子犬はまだ気が散りやすいので、飽きて走り出してもコントロールできるようにリードをつけます。グループでのトレーニングの場合には、全体を台無しにしてしまう可能性があるからです。
ただし、リードを引っ張ってオスワリを誘導したり、フセさせることはしません。あくまでもおやつをルアーとして使い、犬のからだの状態をコントロールしてあげます。どこか別の方へ飛んでいってしまいそうになったときに、リードで引き戻します。(囲いのある安全なところで、単独でトレーニングしている場合には、リードはつけなくても良いでしょう)

オスワリ、フセの誘導はおやつを使います。おやつの魅力はとても重要で、犬によってはいつものフードでは気を引けない場合があります。そうなったら、もっと魅力的なおやつを使う必要があります。ワークショップでは、ドライフード、ジャーキー、チーズ、ソーセージ、とっておきのフリーズドライレバートリーツなどを使いました。臭いが強いものに良く興味を持ってくれます。
トレーニングを成功させるためには、おやつのランクを把握し使いこなす技術もとても大事です。

良くできた場合にはほめる言葉も重要です。軽くほめたり、すごく良くほめたり、ほめる態度のレベルをコントロールする必要があります。またその使い方、タイミングも大切です。良いトレーナーは、ほめるレベルとタイミングがとても上手です。タイミングが遅れたりすると、子犬はすぐにその人に集中することをやめてしまいます。

トレーニングをする時は、なるべく第三者に見ていてもらい、自分の指示やほめ方がわかりやすいかどうか常にチェックすると良いでしょう。人間から見て、何をさせたいのかわかりにくいトレーニングは、子犬にとってはもっともっとわかりにくいです。ほめても犬が嬉しそうにしていなければ、それはほめていることにならないので注意しましょう。

興奮している犬

興奮している犬は、学習する状態にはありません。興奮している犬はトレーニングできないということです。犬が興奮している場合は、落ち着かせなければなりませんが、無理に押さえつけるのは良くありません。自ら押さえることを教える必要があります。

興奮している犬をじっと観察し、4本の足が地面についたらおやつを与えます。だんだん落ち着いてきたら、わざと犬を興奮させるように刺激して、4本の足が地面についたらおやつを与える、を繰り返します。このとき、トレーニングをする人は、なるべく無駄な動きをしないように気をつけなければなりません。

「スワレ」「フセ」「立て」

子犬に「スワレ」「フセ」「立て」を教えることはとても大事なしつけです。吠える、噛むなど、将来出てくる可能性のある問題行動は、そのほとんどが犬を座らせたり、フセさせたりして、そのままマテの状態にすることで防げるのです。

どのくらい言うことをきくか?

忠実に指示に従うようにトレーニングするためには、犬がどのくらい言うことをきいているか、正確に把握することが大事です。言葉による指示は何度も出してはいけません。1回できかないのなら、犬はきく気がないのです。
「スワレ」「フセ」「立て」に比べて少し高度になる「マテ」「オイデ」を教えるためには、「スワレ」「フセ」のトレーニングにおいて95%以上の成功率が理想です。20回指示を出して19回以上指示にしたがってくれなければ、先に進むことは難しいということです。

呼び戻しのトレーニング

呼び戻しは、犬が来なくても犬の方へ近づいていってしまってはいけません。かえって犬から遠ざかるべきです。犬の気を引ける声を出し(高い声や変わった音が気を引きやすいです)犬が注目してくれたらすぐにほめて、おやつを与えることが大事です。間があいてしまったら、すぐに他に気がそれてしまいます。

男性の場合には、怖がられることが多いので、特に魅力的なおやつを持つと良いでしょう。がんばって高い声で犬の名前を呼ぶことも効果があるでしょう。笑顔(^-^)も必要です。

子犬のしつけの大切さ

どんなトレーニングでも、小さいうちからしっかりとやれば、犬は驚くほど忠実に従ってくれます。つまり、まだ小さくてかわいい時期から、トレーニングをしたり、しっかりとしつけることは、犬と飼い主が幸せに暮らしていくために、とても大事なのです。
まずは飼い主さんが犬のことについての知識を増やし、行動学からその習性を理解し、トレーニングに、しつけに取り組むことが大切です。
犬とうまくつき合うには、お互いを知り合うことが大事です。知り合えなければ、良い友達にはなれないのです。

~ダンバー博士のワンポイントアドバイス~
If you whisper, dog will listen.

Dr. Ian Dunbar’s ハワイ ワークショップ
Red Heart —- SIRIUS 5日間実践ドッグトレーニング
犬のしつけ、トレーニングに関する ナカニシの個人的なメモより