もくじ
犬と一緒に寝てはいけない
◎気温によりますが犬は飼い主と一緒に寝るのが好きな動物だと感じます
(※飼い主との関係性によって当てはまらない場合があります)
一緒に寝ると言うことを聞かなくなる?
家庭犬訓練所を辞めて、シドニーのドッグテックインターナショナルが開催している、ドッグトレーニングアカデミーに入学したとき、教わったマニュアルでは、「犬と一緒に寝てはいけない」とありました。自分が「TOP DOG」家族の中で一番えらいと思ってしまう=言う事をきかなくなる、ということでした。クライアントさんの中には、そう言われた瞬間、泣き出してしまった女性もいました。今思えば、かわいそうだな、と思ってしまいます。犬が言うことを聞かないことと、一緒に寝ることは、なんら因果関係はないと、今の私だったら考えることができます。
ハウスで寝られる練習
私は、犬たちと一緒に寝ています。ただ、ハウスで寝られるようにもしておいた方が、人間の生活に犬という動物を引き込んでしまっている状態では、都合が良いことが多いですので、1歳になるまではハウスで寝かせていました。もちろん、トイレを教えるまでは、ハウスで寝かせる必要性は大きいと思います。
分離不安になる?
この点に関しては、なんとも難しいです。たしかに、子犬を迎えてすぐに一緒に寝るようになったら、ハウスで寝るより飼い主とベッドで一緒に寝る方が心地よい、と学習したら、ハウスで寝るように入れても、「出せ!」と要求するようになるかと思います。しかしそれは、分離不安、というものとも違うような気がするのです。分離不安のもっと大きな原因は、ベーシックトラスト(基本的信頼)ができていないことなのではないかと思っています。(※子犬を迎えたら、ケージから出してはいけない、育まれる「ベーシックトラスト」基本的信頼を参照ください)
8週齢?いやいや12週齢くらい必要です!
ペットショップで売られている子犬たちは、小さい方が売れ行きが良い、といういわゆる「儲け」のしくみで、かなり幼いうちに親から引き離されることが多いようです。8週齢規制を動物愛護法で制定しよう!という動きがありますが、私は8週齢どころか、12週は置いておいた方が、子犬の心のためにも良いですし、飼い主さんの苦労も、2ヶ月で迎えるのと、3ヶ月で迎えるのは、ぜんぜん違う!16年2000頭以上と向き合ってきての経験からそう感じています。
引っ張りっこは必ず飼い主が勝たなければいけない
◎勝っても負けても言うことを聞くようになる!?
遊びは「狩り」のシミュレーション
まったくこんなこと、誰が言い出したんだろう?って思います。おそらく、遊んだことがない人が言い出したのでは?犬がする遊びは、その多くが「狩り」のシミュレーションなのです。遊びながら「狩り」に必要なスキルを身につけるのですね。自然て、本当によくできていると感じます。偉大なる力、すばらしい!「狩り」に必要なスキルを考えてみました。
1. 動くものを追いかける、走る、持久力
2. すばやく噛みつく
3. アゴの力を鍛える
4. 引っ張る(引きちぎる)
こんなところでしょうか。引っ張るのは、獲物を引きちぎって食べるために必要なのですね。そのスキルをアップさせるために、どっちが勝ち、なんて関係ないことです。ちぎれるのですから、そういう意味では両方勝ち!
必ず勝つようにしてみたら
テンプル・グランディンの本「動物感覚」(NHK出版)に、引っ張りっこに関して、大変興味深い記述があります。テンプルは、犬の訓練士がすすめる標準的な忠告に疑問を呈しています。その標準的な忠告とは
・犬と綱引きをして遊ぶと、犬は飼い主と対等だと思うようになり、これはよくないことだ
・綱引きで勝たせてやると犬はいうことを聞かなくなるが、飼い主が勝てばもっということを聞くようになる
というもの。アメリカでも「おかしなしつけ」はあるようです。もっとも、アメリカを手本としてその「おかしなしつけ」を輸入しているのが日本なのですね。これに対しテンプルは、イギリスで行われた14頭のゴールデンレトリーバーの調査で、どちらも正しくないことがわかった、と言っています。その調査とは、レトリーバーと綱引きをして
・何回か続けて勝つ
・何回か続けて負ける
としたところ、負け続けた犬はゲームのあとでますますいうことを聞くようになりました。やっぱり勝った方がいいのか!となるのかとおもいきや、勝ち続けた犬もゲームのあとでますますいうことを聞くようになったのです!そして、ゲームをしたことで急に支配的になった犬は一頭もいない。支配的な行動を見せる犬はいなかったのです。テンプルは
「おそらく犬と綱引きして遊ぶのは安全だし、楽しいと思う。
犬にとって好ましいことだといってもいいかもしれない」
と言っています。これを読んで私は、引っ張りっこというゲームをすることで絆が深まり、ますますいうことを聞くようになったのではないか、連帯感というか、一緒に作業をすることが楽しくなったのではないか、と思いました。だからこそ、人と犬は仲良しになれるのですね。
そしてこの話には、オチ?があり、負け続けた犬は、引っ張りっこにだんだん興味がなくなったそうです。どうやら犬も、いつも負けるのはおもしろくないらしいです(笑)
心で考えたら、わかることですね!
仰向けにして押さえつければ、犬は飼い主を上だと思う
◎かえって関係が悪化することに
無理やり押さえつけられて噛むようになった
現実はもっと悲惨なことになっているケースが多いです。飼い主を上だと思うどころか、噛みつくようになっています。訳を聞いてみると、パピー教室にいったらトレーナーから、「嫌がっても絶対に負けるな!負けたら、犬は飼い主よりも上だと思うようになる」と言われ、嫌がる犬を仰向けに押さえつけようとしたところ、パニック状態になって失禁。それでも放してはいけないと言われたのでなんとか押さえ続けた。帰宅して、飼い主に怯えるようになり、触ろうとしたらものすごい勢いで噛まれた、ということです。冷静に考えれば、当たり前のことではないですか?
もちろん、そんなことをされても平気な犬もいます。でも怖くて耐えられない犬もいるのです。それは、愛犬をよく見ればわかることだと、私は思います。理性ではなく、感性で向き合ってみれば、嫌がっている犬の気持ちが伝わってきます。
イクワン・アクセルの教育的指導
5頭の子犬が生まれて、母犬のフーラは養育に関してはよく面倒をみましたが、しつけは、「犬の行動学」(エーベルハルト・トルムラー著)にあるように、群れの雄の成犬、アクセルが担当してくれました。子犬がみんなから遠く離れていこうとすると、激しく動き回り子犬を怖がらせました。みんなから離れると、怖いことがある、と教えているそうです。まさに生で、アクセルがその行動を見せてくれました!子犬はアクセルが気になって、前足で叩いたり、甘噛みしようとしたりします。アクセルはそれを受けながら、許したり、戒めたりして、子犬を教育していました。戒められた子犬は小さく「キャン」と吠えて、最初は怯える様子を見せます。しかし、だんだん慣れてくるのがわかりました。アクセルはていねいに、一頭一頭、鼻先でつつかれたらお腹を出すように教えているようでした。実際、子犬たちは、アクセルに鼻先でつつかれると、さっとお腹を出すようになっていました。しかしそれはもちろん、服従なんかではありません。すぐに起き上がって、甘噛みしようとアクセルに近づいていくのです。それはまるで、やっつけたハズのゾンビが生き返ってまた襲ってくるようでした(笑)
無理やり押さえつける必要はなかった
それを見ていて、私もアクセルの真似をして鼻で子犬をつついてみました。すると子犬たちは、さっとお腹を出しました。我が家の子犬たちは、お腹を出させるのに押さえつける必要などありませんでした。その教育は、子犬が歩き出すようになってからすぐに始まります。30日くらいからでしょうか。このとき、教育してくれる成犬と一緒にいられるか否かが、そうした社会性ある行動を学ぶことができるかどうかに関わってきます。おそらく、怖くてお腹を出せない犬たちは、こうした教育を受けずに、流通され、ガラスケースに独りぼっちで入れられたのではないか、そんなことを考えてしまいます。