犬とのよりそイズム

おかしな『犬のしつけ』???Vol.4

犬の好きなように歩かせてはいけない

◎不自由すぎるのは犬もつまらない

恵まれた環境、そうでない環境

 なんの意地悪なのでしょうか?って思ってしまいます(笑)もちろん、環境によって危険な場合は、好きなように歩かせてはいけないことがあります。都会は特に、好きに歩けないところだらけなのではないでしょうか。そんな環境で犬を飼うことがいいものか、北海道の恵まれた環境で犬を飼っている妹と愛犬を見ていると、大いに疑問を感じてしまいます。

好きなように歩ける=自分の方がえらい?

 危ないから、迷惑がかかるから、好きなように歩かせるわけにはいかない、という事情はわかりますが、好きに歩かせると、自分の方が飼い主よりえらいと思うようになる、などという馬鹿げた考え方があるのに驚きます。犬たちをよく見てみましょう。前を歩いていることを意識しているように見えますか?もし意識していないのであれば、「=自分が上だ!」なんて考えていないことになります。

 歩いている姿をみて、臭を嗅いだり、マーキングをしようとしたり、動くものを目で追ったり、とても楽しそうですし、忙しそうです。位置を確認して、自分が前だから飼い主よりもえらいぞ!なんて考えているようには決して、私には見えません。ただ、前に行きたい、でもひもがついているから限度がある。おそらく彼らは、私たち飼い主こそが「引っ張る」と思っているのではないでしょうか?

 私は、環境によっては、犬たちの好きなように、楽しく歩いてほしい、と思っています。幸い、私が住んでいる地域では、比較的大きな公園があり、土を踏むことができますし、草むらや木々が生えています。アスファルトを歩いているときよりも、犬たちが楽しんでいることは明らかです。

犬より先に飼い主が食事をしなければならない

◎リーダーは先に食べない!?

Leaders eat first.

 これも、ドッグトレーニングアカデミーで教わったルールの一つでした。
飼い主は、群れのα(アルファ)でなくてはならない!という考えがベースにありましたので、当時は「なるほど!」なんて思っていましたが、だんだん、なんか違うな?バカバカしいな、と思うようになりました。ですので、ずいぶん前からこのルールは無視。だからといって、犬たちが私より上だなんて思っている様子は皆無です。今では、私の気持ちの中にも、愛犬たちとは対等、私が上だ!なんて思っていません。ただ、彼らを守るために、いうことをきかせなくてはならない場面は多々あります。そういう意味での責任、responsibility、はあります。しかしそれは、主従関係を軸とするリーダーシップとは少々異なるように思っています。

先に食べれば犬より上になれる?

 このルールに振り回されて、苦労しているお客様がいらっしゃいました。一人暮らしのOLさんで、会社から帰ってきて、留守番していてお腹が空いている愛犬のことを不憫に思い、すぐにごはんをあげたいので、とりあえずスーツも着替えずに、愛犬の目の前で何か口にして、愛犬より先に自分が食べたことをアピールしてから、犬のためにごはんを用意する、ということをやっていました。しかしできれば、普通に先に犬にごはんをあげて、着替えてからゆっくり自分の食事がしたい、というのです。私はあっさり「先にあげていいです」とお話ししました。飼い主さんは、今までの苦労はなんだったのだろう!?と悔しがっていました(笑)

 もしこのルールが有効なら、犬よりも上になりたければ、先に食べ続けていればいいはずなのですが、先に食べても、いうことを聞かない犬はたくさんいます(笑)いうことをきてもらうために必要なのは、先にごはんを食べること、なんかではないのです。いうことをきてもらうために必要なのは、犬の学習のしくみを知ることです。学習理論を理解することです。

人の食べ物を犬にあげてはいけない

◎人の食べられるもので いぬごはん
 病院での数値が改善、毛艶も良くなる!
 ※個体差があります

犬の体によくない食べ物

 犬にあげてはいけない食べ物はあります。そういう意味でしたら、このルールはありです。しかし、まったく馬鹿げた考えですが、人と同じ食べ物を食べると、飼い主と同等を思うようになり、いうことをきかなくなる、というのがあるようです。実際にやってみると、例えば、私が食べているものを食卓から犬たちにあげると、もらったものがある日は、テーブルの側にきて落ち着かなくなります。いつもらえるのか、期待に目を輝かせながら待っています。そんな姿をみると、ついあげてしまいます。するとますます、テーブルの側にくるようになります。

食べたいのに食べられないのはかわいそう?

 欲しがってがまんしている姿をみて「かわいそう」と思う人もいるかもしれませんが、よく考えてみましょう。彼らは常に、獲物を探す、という習性があります。獲物は捕れるときもあれば捕れないときもあります。そう考えると、常に食べられるという状況は犬たちにとってエキサイティングなことではないと思うのです。もらえるか、もらえないか、それを楽しめる動物なのでは?と考えるのは、いきすぎでしょうか?動物園で例えると、旭山動物園の坂東園長は、野生の動物はほとんどの時間を、天敵から身を守ることと、獲物を探して捕ることで費やすのに、動物園の動物はその必要がない。だからひどく退屈してしまう。それを改善してやるのが動物園の責任だと考えていらっしゃいます。退屈すぎることは、動物のQOLを下げてしまうことになるかと思います。

「もらえたらラッキー!」
愛犬たちをみていて、そんなふうに思っているのでは?と私は感じています。

※QOL:Quality of life 人生の内容の質、社会的にみた生活の質

犬を人に飛びつかせてはいけない

◎飛びつくのは友好的な場合がほとんど

友好的で歓迎

なぜ?(笑)って思ってしまいます。

 飛びつき方にも種類があるかと思いますが、出張レッスンでお客様のお宅へうかがってきて、飛びついてくれた犬たちはみな、「わーい!」「遊ぼう!」「いらっしゃい!」「私あなた好き!」そういうメッセージをくれたと感じています。攻撃的に飛びついてきた犬は2000頭以上の犬たちの中で一頭もいないのです。とびついてくれない犬も多いです。それは怖いからです。怖いから飛びつく可能性があった犬はいます。それは恐怖から来る攻撃的な飛びつきで、彼らはそれほど怖がっているのです。怖がらせることはよくありませんが、レッスンなので仕方なくうかがっているわけですが。

転ばせてしまう

 転ばせてしまうと危ないから、ということもあります。転んでしまう可能性がある人には飛びつかせるべきではありません。私は飛びつかれたいので(友好的な場合)飛びついてくれると嬉しいです。歓迎してくれるのはとても嬉しいのです。なので、相手が大きくて、私を転ばせるほどの力があって、もし私が転んだとしても、これは自己責任ですから、飼い主さんを責める気持ちは皆無、ましてや犬を責める気持ちも皆無。転んでしまった自分を情けなく思うでしょう。しかし、犬にとっては相手が転んでくれたら、さらに盛り上がること間違いなし!だって、犬同士はそうやって遊ぶのですから、いい相手がきたぞ!とこうなるわけです。

背中や腰を痛める?

 背中や腰を痛める、という説もあるようですが、毎日長時間飛びつき続けるのであればその危険性もあるかと思いますが、飼い主さんの帰宅やお客さんが来たときくらいなら、心配する必要はないと私は思っています。実際、我が家の犬たち、ロック、コタロー、アクセル、フーラは、生涯私の帰宅時には飛びつき続けてくれましたが、背中も腰も痛めることはありませんでした。

 アクセルは、前庭神経炎をやってからは、肉体的に飛びつけなくなっていました。飼い主としては本当に寂しい気持ちでした。

※飛びつきで背中や腰を痛めることに関しては、私は獣医師ではないので、心配な方は獣医師に確認してください。